お知らせ
一審判決で確定した内容と控訴の状況について
１，原告1木村倫（仮名/愛成会幹部職員）、原告2鈴木朝子（仮名/被告グローの元職員）が被告北岡賢剛と被告グローに損害賠償を求めた訴訟（2020年11月13日提訴）の判決は、2024年10月24日に、東京地方裁判所民事36部で言い渡されました。
判決内容は、原告1の被告北岡に対する損害賠償請求は220万円の範囲で請求が認められ、原告2の被告北岡に対する損害賠償請求は認められず、原告2の被告グローに対する損害賠償請求は440万円の範囲で認められました。
控訴については、被告北岡が原告1に対してだけ行いました。原告2については原告2の請求が認められなかったため被告北岡は控訴できず、原告2の方からも控訴しなかったので、原告2の被告北岡に対する判決内容は確定しました。また、原告2と被告グローについては、双方とも控訴しなかったので判決内容が確定しました。控訴審の対象となるのは、被告北岡の原告1に対する部分だけです。
２，原告2について判決で確定した内容について
原告2については以上のように控訴がなかった結果、被告北岡が原告2に対して行った性暴力とセクハラ等の事実関係が確定しました。原告2は被告北岡に対して30の性暴力・セクハラ等の加害行為を訴えました。被告北岡は、裁判の中でそれらのほとんどを否定しましたが、裁判所は、被告北岡の、ホテルの部屋で行われた性加害行為、その後の原告2に対する口止め、セクハラメール、手をつないだ行為などを「人格的利益を違法に侵害する不法行為」と認めました。そしてこれらの不法行為は2014年4月から2015年6月まで1年以上にわたり、被告北岡の性的欲求の実現のためであり、継続的に繰り返された行為であるから、「一連一体の行為」として「継続的な不法行為」にあたると判断されました。
消滅時効については、残念ながら最後の不法行為から3年以上経った提訴なので時効が完成していると判断されましたが、損害賠償請求権の行使が、被告北岡から叱責されたことに反発したことや、恋人、友人などに伝えたことをもって、権利行使が可能と判断された点は、性被害者が訴えることの困難さを反映していない判断だと思います。
また、原告2と被告グローの関係については、当時の理事長であった被告北岡の行為は、職場及びその延長線上の行為であり、それを防ぐことができなかった被告グローの安全配慮義務違反が認められました。そしてその違反により原告2に及ぼした精神的苦痛等が440万円であることも確定しました。
以上の確定した内容については、被告グロー及び被告北岡は、原告2に対してふさわしい行動をとるべきでしょう。
３，原告1について判決で確定した内容について
原告1については被告北岡が控訴したため判決内容は確定していませんが、事実認定面では、原告1は被告北岡の行った77個の性暴力とセクハラ等の加害行為を訴えました。一審判決は、それらの行為のほとんどを「人格的利益を違法に侵害する不法行為」と認めました。そしてそれらが、被告北岡の性的欲求を実現させるためのものであり、2012年9月以降約7年間の長期にわたり、間断なく継続して行われたから「一連一体の行為として、継続的な不法行為」にあたると判断しました。その結果、最後の2019年1月から提訴が3年以上経過していないので、消滅時効も完成しないと裁判所は画期的な判断をしました。個々の不法行為を別々に捉えると3年が経過してしまうところを、判決は被害者を救済する立場に立ったと言えます。そして損害賠償額等は220万円とされました。
しかし以上の判決に対して、被告北岡が控訴しました。被告北岡の加害行為についての嘘や作り話の証言は裁判所によって否定されました。控訴審で同じことを繰り返しても結論が変わるとは思えません。それにもかかわらず控訴をするとは、原告1をさらに苦しめることになると自覚すべきです。
本件について、原告2人のコメントをREPORTにアップしました。
これまでの裁判の経緯、判決内容もREPORTからご覧いただけます。
About Us
「ただふつうに働きたかった」
～ 社会福祉の現場で働く人の「尊厳」を守るために ～
2020年11月13日。「社会福祉法人グロー」（滋賀県）および「社会福祉法人愛成会」（東京都）の元職員・幹部職員が、当時グロー理事長で愛成会理事でもあった北岡賢剛氏とグローに対し、長年にわたる性暴力やハラスメントについての法的責任と損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。私たち「Dignity for All －社会福祉法人役員による性暴力・ハラスメント裁判の原告を支える会－」は、この裁判の原告の二人を支えるために集った有志の会です。すべての人の尊厳が守られる社会になるようにという思いを込めた名称としました。被害を訴えた方たちが、深く傷つけられた尊厳を回復していけるよう、また二次被害によってさらなる傷付きがもたらされないようサポートしていきます。被害に遭った方たちを社会的に支えていくことが、今後の性暴力やハラスメント被害を抑止し、誰にとっても生きやすく、安心して働ける社会に繋がっていくと考えています。
社会福祉は、「人権」や「尊厳」を扱う専門性を持つ分野です。しかし、人権や尊厳を重んじる社会福祉業界では利用者には福祉的なケアの提供に努める一方で、職場で働く人に対する尊厳を軽んじる性暴力やハラスメントという深刻な問題も存在しています。言うまでもなく、法人運営者は現代にふさわしい倫理観を持ち、権力を濫用しない資質と人の尊厳を重んじる品格が求められます。法人運営者が、その権力を利用し自らの性欲や支配欲を働く人たちに向けることは到底許されることではありません。
今回、被害を訴えた方たちは、性暴力やハラスメントに遭わず、また尊厳を脅かされる恐怖に晒されることなく「ただふつうに働きたかった」と言います。一人ひとりに内在化される「ふつう」は異なりますが、個人の尊厳を傷つけられずに生きていくことは、すべての人にとってあたり前に保障されるべきものです。職場での性暴力やハラスメント行為は、人の尊厳を奪い、仕事をすることを困難にさせる重大な人権侵害であり、許されてはいけない暴力行為です。多くの場合、女性や立場の弱い人がその被害に遭い、身体的・精神的影響を受け、忘れられない屈辱を抱えながら、多大な労力と時間を費やすことを強いられます。性暴力やハラスメントを軽視し、ときに容認、黙認する男性を中心とした日本の社会形成が、社会福祉業界ですら深く根付いています。これは社会にある構造的な根深い問題であることを示しています。ハラスメントの行為者だけでなく、それを助長する周囲の環境や文化も許されてはなりません。私たちは、これを社会全体の問題として捉え、学ぶべきものであると考えています。社会の価値観が良い方向に更新され、社会福祉の働く場に限らず、すべての人が職場で性暴力やハラスメントの被害に遭わずに、尊厳を尊重され安全に安心して仕事ができる社会を強く望みます。
2021年4月1日
Dignity for All
－社会福祉法人役員による性暴力・ハラスメント裁判の原告を支える会－
当会の名称変更のお知らせ
2021年3月に、当会の名称を「「愛成会」と「グロー」の性暴力とパワハラ被害者を支える会」から、「Dignity for All －社会福祉法人役員による性暴力・ハラスメント裁判の原告を支える会－」へと変更しました。2020年11月から状況は変化し、改めて会の目的やあり方を議論し、すべての人の尊厳（Dignity）が守られる社会になるようにという思いを込めた名称としました。
原告2人の訴えを受けて、2020年11月にこの有志の会を設立してから、多くの方たちから応援や寄り添う声をいただきました。多様な方たちから社会的に表明された声に励まされています。心より感謝申し上げます。
この裁判では、原告木村倫さん（仮名）は、被告北岡賢剛氏に対して、原告鈴木朝子さん（仮名）は、被告北岡氏と社会福祉法人グローに対して訴えを起こしています。原告たちが提訴してから、北岡氏は社会福祉法人グローの理事長と社会福祉法人愛成会の理事を辞任しました。愛成会では、評議員会が機能しハラスメントに関わった理事が解任され、新理事長のもと法人改革が進んでいます（※1）。このため、愛成会の法人内部としての問題は解消されつつあり、今後の推移を見守りたいと思います。一方で、グローでは、北岡氏は理事に留まり争う姿勢を示しています（※2）。
2021年1月14日に、北岡氏による性暴力・ハラスメント裁判が始まりました。改めて私たちは、裁判に対峙していく原告のお二人を支えていくことを決意しています。また、原告たちを二次被害から守りながら、表明された声に耳を傾けることは、構造的な根深い問題を内包している私たちの社会とって重要であると考えます。そして原告2人の裁判を支えることは、社会の価値観が更新され、社会福祉の現場に限らずすべての人の「尊厳（Dignity）」が守られ、性暴力やハラスメントの被害に遭わずに、安心して働ける社会に寄与するものと考えています。
引き続き、この裁判の経過を見守っていただけると幸いです。
※1）2021.01.09 「ハラスメントに関する一連の経過と新理事体制について」（社会福祉法人愛成会)
※2）2020.12.18「一連のハラスメント報道に対して」（社会福祉法人グロー）
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